きょうだいげんかの環境調整|けんかの中身を分けて考える

おもちゃの取り合い。ゲームの取り合い。我が家の5歳と3歳は、毎日どこかでもめています。きょうだいげんかをひとまとめにせず、何でもめているかを分けてみると、打てる手が変わります。元教員・保護者の視点から、家でできる環境調整を考えます。
けんかの中身を分ける
大人から見ると「またけんかしてる」で、どれも同じできごとに見えます。中身は、そのつど違います。
3歳の娘が5歳の息子のおもちゃを取る。息子がゲームをしていると娘も取ろうとする。お風呂で体を洗う順番でもめる。並べてみると、どれも「きょうだいげんか」ですが、もめている中身は同じではありません。
誰のものか。誰の番か。近すぎないか。親がどちらを見ているか。分けていくと、だいたいこのあたりに集まります。
どれでもめているかで、できることが変わります。誰のものかで争っているときに交代のルールを持ち出しても、話がかみ合いません。順番でもめているときに「仲よくしなさい」と言っても、決めるべきことは決まらないままです。
教室では、持ち物に名前が書いてあります。使う道具はだいたい一人に一つ。席も、しまう場所も決まっています。誰のものかでもめる余地が、そもそも少ない環境でした。
家は逆です。おもちゃは共有で、ソファもテレビも一つ。誰のものでもないモノが、家じゅうにあります。そこに、体の大きさも、できることも違う二人が暮らしています。もめる材料のほうが多い場所だと言えます。
きょうだいげんかを減らす取り組みを集めた検証では、子ども自身がやりとりを練習する方法と、親が仲裁の仕方を学ぶ方法が調べられています。どちらも改善の報告はありますが、どれくらい変わるのかははっきりしません。
はっきりしているのは、親が関わるか関わらないかではなく、どう関わるか、のほうが論点になっている、というくらいです。
家で試せる3つのこと
1. 誰のものかを、目で分かるようにする
取り合いになるのは、誰のものかが決まっていない状態だからだと思っています。共有のおもちゃ全部に線を引く必要はありません。毎回もめる特定の1つだけ、色や印で持ち主が分かる形にする。あるいは逆に、これは共有だから順番、とはっきりさせる。
我が家はなるべく同じものを二つ揃えるようにしています。しかし、高価なものは二つ揃えるのは難しいので、兄がゲームをしている間は、娘は動画を観ることができるといった代替手段を使っています。
2. タイマーを活用する
「順番でしょ」を親が毎回言うかわりに、タイマーを活用しています。
我が家では、ゲームの交代に視覚タイマー、「いま使っていい人」を示す札などを使っています。
けんかの回数が減ったかは、数えていないので分かりません。変わったのは、親の負担です。「タイマーが鳴ったら交代」と先に決めてあると、交渉の相手が親からタイマーに移ります。
使っている道具そのものは、順番を待てない子に役立つ環境調整グッズ5選のほうに書きました。
3. 離れられる場所をつくる
けんかの最中に二人を向かい合わせたまま言い分を聞こうとすると、お互いの顔と声がそこにある状態が続きます。どちらかが距離を取れる場所があれば、そこでいったん切れる、という考え方です。
つくるのは、反省させる場所ではありません。人の声と視線から抜けられる場所です。部屋の隅でも、押し入れの下でも、クッションを一つ置いておくだけでもかまいません。連れて行かれる場所、罰として使われる場所になった時点で、子どもは自分から入らなくなります。
我が家は寝室がその役割を果たしています。
けんかをゼロにするのは目標にしない
けんかは、なくなりません。なくしたいとも思っていません。言い分をぶつけて折り合いをつける場面は、家の中くらいにしかない、というのがいまの考えです。
減らせるのは、けんかの回数そのものより、親が間に入って決める回数のほうです。どちらが先だったか、どちらが悪いか。答えの出ない問いを毎回引き受けていると、こちらが先に消耗します。
二人同時にぐずられて、どちらを先にするか一瞬で決めなければいけない場面は、いまもあります。仕組みを入れても、そこは残ります。
けんかの中身を分ける。分かれた数だけ、手を打つ場所が見えます。まずは、どれでもめているかを見るところから始めます。
参考文献
- きょうだいげんかを減らす取り組みを集めた系統的レビュー(対象は支援を求めていない一般の家庭・1歳半〜9歳):Tucker CJ, Finkelhor D (2017) The State of Interventions for Sibling Conflict and Aggression: A Systematic Review. Trauma, Violence, & Abuse, 18(4), 396-406. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26681173/
- 保護者向けプログラムのきょうだい関係への効果をまとめた分析(研究数が少なく見積もりの幅が大きいと著者が明記):Leijten P, Melendez-Torres GJ, Oliver BR (2021) Parenting programs to improve sibling interactions: A meta-analysis. Journal of Family Psychology, 35(5), 703-708. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33734758/


